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2011年12月の記事一覧

【カテゴリ】■幸せな受験■

「受かる子」の家庭は、親の方針が揺るがない夫婦が一枚岩なら子どもは伸びる

射程圏内でもブランドに流されない親

 いったん中学受験の世界に足を踏み込むと、最難関校のブランドの魅力にはあらがいがたいものがあります。
けれども、ブランドの魅力に流されず、わが子の将来像をしっかりと見定めて志望校を選別しているご家族がありました。

G君のご両親は直前の模擬テストで「もしかしたら最難関校に入れるかもしれない」という状況でも心変わりしませんでした。
 もともと大変教育熱心な家庭で、テレビもほとんど見せず、ゲームはいっさい禁止という方針でした。
まわりから「そんなに厳しくしなくても」「テレビも見せないなんて」などといった声が聞こえてきても、揺るがず、譲らない強さがありました。
 それだけしっかりとした考えのあるお母さんですから、やはりリーダー格で、ほかのお母さん方を束ね、尊敬もされている立派な方でした。
 G君が目指していたのは、最難関校よりひとつランクが低いBランクの私立中学。
一家でいろいろな学校を見学してまわり、みんなで実際に見て歩いたうえで「ここだ!」と決めた学校です。
そのような家庭で育っただけあって、G君は集中力も積極性もあり、塾での成績も順調に伸びていきました。
志望校への合格はもう確実だろうと見えていたところ、秋口の模擬では最難関校でさえ60%の確率で合格の見込みありと出ました。
それだけの実力を付けていたのです。
 そして、いよいよ一月、第一志望校の入試があり、みごと合格しました。
実は、私はこの合格を受け、「2月にある最難関校の入試も受けてみてはいかがですか?」と、お母さんに勧めていました。
いいにくいのですが、塾長として実績がほしいという気持ちにあらがえなかったのです。
最難関校合格者の数は、そのまま生徒数の増加につながります。
「ウチの方針は、これまで何度もお話ししましたよね。あれだけ話し合ったのに、高濱先生がそういうことをおっしゃるんですか?」
お母さんに、ぴしゃりといわれてしまいました。
本当にお恥ずかしい限りで、小さくなって頭を下げるしかありませんでした。
さらに、こんなこともいわれました。
「ほかの学校に行かないのは、よくご存知のはずでしょう。行く気のない学校を受けさせるのは失礼じゃないですか」
その最難関校に行く気はないし、合格しても行かない、それなのに受けさせるのは失礼だというのですから、いかにブランドに踊らされていないかがわかります。
不動の方針とはこういうものだと、あらためて勉強させられたケースです。
結果的に、ご両親の選択は大正解でした。
G君はそのBランクの私立中学で、集団のリーダーとして生き生きと活躍し、健やかに成長していったのです。
会うたびにたくましくなり、顔つきがしっかりとしてきて、頼もしく思いました。
 本当のところ、G君は小学校のときは友人関係の問題を抱えていたのですが、それもみごとに克服し、大きく羽ばたいたのです。
ご両親がまさにG君にふさわしい学校を選び、最難関校が射程圏内に入ってもぐらつかなかったことが、彼の将来を輝かせたといってもいいでしょう。

 この事例のように、本人にとっても、ご両親にとっても、レベルの高い学校に入るだけが幸せとはいえません。
わが子への期待が高いほど、また高い理想を掲げている人ほど、上へ上へと目がいきがちですが、子ども本人から視点がずれていないかを、常に心しておくべきでしょう。
「少しでもレベルの高い学校に入れば、それだけ未来が開ける」
「滑り込みセーフでも何でもいい、最難関校に合格できればこっちのもの。あとは入ってから頑張ればいい」
そんなふうに考える親御さんもいますが、本人を限界ぎりぎりまで頑張らせてなんとか上のレベルの学校に合格しても、それで万事めでたしめでたしとはいきません。
難しいのは、入学してからです。

 ブランド中学といえば、たとえば開成中学は大変に響きのいいブランドです。
多くの人があこがれ、何が何でもわが子を入れたいと考えています。
でも、それだけに厳しい現実があります。
開成に行くほどの力を持っている子は、地方在住で公立中学、高校に進んだとしても、全員が東大に合格してもおかしくないというくらい優秀です。
それだけ難問につぐ難問を解いて、半端ではない難関を突破した子だけが入っているのです。
そのような集団のなかで、自らを下位位置付けてしまった子は、なかなか健全な自尊心が育ちません。
「やったぞ!合格した!」と胸を張って入学したのはいいけれど、まわりがあまりに優秀すぎて大きなギャップを感じると、たちまち心が砕かれてしまいます。
たとえ自分が開成の生徒だとしても、子どもにとっては「まわりの中で何番なのか」がすべてだと感じ取ってしまうケースがあるからです。
 そして、毎日毎日、上位グループとの違いを見せつけられることで、「自分とは出来が違う」「自分はダメな人間だ」と自分を否定的に捉えるようになりがちです。
世の誰もがうらやむ学校に入っているのに、「自分は落ちこぼれだ」という意識が強く植え付けられ、自己肯定感を得られなくなってしまうのです。
 日本全体で見れば圧倒的な上位グループに入っているのに、本人の心の中で「自分は下位に属している」というイメージがかたまります。
そうなると、まわりがいくら否定してもコンプレックスから逃れられなくなるケースが多いのです。
 そして、たとえ有名大学に合格しても、東大合格でなかったら、またそこでコンプレックスを抱き続けることにもなります。
 幸せな自己肯定感のなかで人生を送ることができなくなってしまうのです。
だから、私は「群れのトップを狙え」と、折に触れお話ししています。
多感な時期に群れのリーダーとして活躍することで、自尊心を持って堂々と積極的に社会に漕ぎ出していけるようになるからです。

2011/12/14 10:32:56

【カテゴリ】■巻頭文■

高濱正伸巻頭文(花まるグループだより11月末号より)

11月27日(日)にShining Hearts’ PartyⅨが開催されました。
我が子に生の音楽を聴かせたいという思いで始めたコンサートは、みんなのコンサートとして、気がつけば多くの方に支えられ、来年いよいよ10周年です。
会場が一つになる生のコンサート独特の力、そして出入り自由、声を出してもいい、そういう自由な場で生まれる温かさ、楽しんで舞台に立つ出演者たち…充実した時間でした。このまま師走を駆け抜けたいと思います。
2011年12月1日
高濱正伸

■11月号たより巻頭文
保護者各位

ユダヤ人の教育については、繰り返し注目されます。全人口の0.25パーセントしかいないのに、ノーベル賞の20パーセントがユダヤ人なのですから、それだけでも当然。
さらに、医学・経済・法律などあらゆる知的職業に人材をこれでもかと輩出しているのですから、注目されないほうがおかしいでしょう。
「メシが食える大人」を育てたい花まる学習会にとっても、一つの教科書と言えます。
 そのユダヤの教育と言えば、ゲームやテレビの一定の制限、相当量の素読、学校で習ったことを家で親に授業(説明)させる、など知る限りでもいくつもあげられますが、先日、イスラエルにも何度も行っているある牧師さんから、面白いことを聞きました。
それは、思春期以降の教育システムです。12歳までは基本お母さんが中心で、お父さんの役割は遊んであげること。
しかし13歳の成人式にあたる儀式以降は、父の分担。第一に仕事を見せ仕事の手伝いをさせ、野外などにどんどん連れて行く。
18歳になったら徴兵が待っていて、厳しく鍛えられる。除隊後は、たいてい1・2年放浪する。
路上でモノを売ったりして食いつなぎながら旅をして、戻ってからようやく大学に行き始めるということです。
 
 野外体験や親の仕事というキーワードは、まさに花まるでも大切にしていますが、「放浪」には膝を打ちました。
私自身も20代前半の頃、バックパックをかついで貧乏旅行に出かけ、ドミトリーに同宿している5人が全員違う大陸から来ているという経験などをして、旅って青年期に重要だよなあと常々思っていたからです。
 今お付き合いのある、50歳前後の活躍している面白い人たちには、似たような放浪の旅の経験がある人が多くいます。
あてのない異空間で緊張や不安を乗り越え、逆に楽しみきることは、人を鍛えるのでしょう。
今の日本に、こじんまりした若者が増えた理由の一つに、一人旅に出る青年が減ってしまったこともあるかもしれません。
 さて、話は山村留学です。長野県の北相木村は山村留学を受け入れていて、花まる学習会からも数名の子が留学しています。
一学年の人数が10人にも満たない小さな学校ですが、子どもたちは元気です。2月に初めて訪れたときは、滝がそのまま凍るマイナス19度という寒さに驚きました。
村も学校も非常に協力的で、「イエイ!」をここまで元気に授業に取り入れてくれている学校は、他にまだありません。
サマースクールで入った川で実に多くの種類の魚が捕れたこと、帰る日に地元の子が宿まで見送りに来てくれ、花まるの子たちが感激したことなど、良い思い出があふれています。
 春よりも確実にたくましい姿を見せている彼らにインタビューすると、「4月になってもずっとこの村にいたい」ということでした。
高学年になる前の山村留学の是非については自信を持ち切れなかったのですが、見る限り良いことしか起こっていません。
彼ら以外の山村留学経験者というと、直接知っている範囲では10名にも満たないので、言い切るのは尚早ですが、親元を敢えて離れることが、今の時代に足りない貴重な経験になっているのは間違いありません。
久々にやった授業も楽しかったですが、川を見に行ったときのことが忘れられません。
これ以上ないくらい清く澄んだ川なのですが、上流から白いものが流れてきました。
それは産卵を終えたヤマメの腹の白でした。数匹、ゆっくりと。次代の子たちを産み付けるために全ての力を出しつくし死んでいった魚たちの、生としての無駄の無さ、大自然の凛たる厳しさに、こみあげるものがありました。ここで育つ子どもは、幸せです。

花まるグループ代表 高濱正伸

10:18:36

高濱 正伸

【プロフィール】
1959年熊本県生まれ。東京大学・同大学院卒。
1993年「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を重視した学習教室「花まる学習会」を設立。その後、小学4年生~中学3年生を対象に一生ものの学習方法を身につけさせる学習塾「スクールFC」も設立。
子ども達の「生き抜く力」を育てることを重視しており、オリジナル教材である「算数脳なぞぺ~①②③」は低学年思考力教材として一世を風靡した。同会の野外体験教室は大変好評で、過去18年で約20,000人を引率した実績もある。
また、長野県青木村の青木小学校で、月1回、各学年向けに「思考力」の授業を行ったり、算数オリンピック委員会理事を務めたりと幅広く活躍する。

【WEBサイト】
http://www.hanamarugroup.jp/

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